主宰挨拶

自然との関わりの中に

日々の哀歓を詠む

 

平成28年12月、岡本眸の主宰誌「朝」が終刊したあと、翌29年1月に「栞」俳句会を立ち上げました。3月には同人会発足、4月には俳誌「栞」創刊と、順調な出発となりました。

 

師岡本眸の提唱し続けた「俳句は日記」という理念は学ぶほどに奥が深く、私たちにとって永遠の課題です。嘗て師は、「日記のように俳句を作る」ことには安逸な日常性への埋没という危険があると言い、「俳句で日記を綴る」という方向を提示しました。

 

日々の記録としての日記を俳句で書き綴るということは、俳句の力量が問われることでもあり容易ならざることです。更に、日常の暮しに詩を見出すには、絶えず俳句のこころを養っておくことが必要です。俳句のこころは、自然との交歓により培われるものでもあります。自然界の森羅万象と触れ合う中で、人は自分も自然の風物の一つであることを知り、自ずと謙虚になります。それは日常を丁寧に暮らすことに繋がり、そこに詩的感動が生まれるのだと思います。

 

「自然との関りの中で日々の暮しに生ずる哀歓を詠むこと」を指針とし、互いに高め合い良い俳句を詠み合っていきたいと思います。更に多くの方々との御縁を大切に、俳句を作る喜びを分かち合い、明るく学び合える「栞」を作っていけるよう努めてまいります。共に研鑽を積み合ってまいりましょう。

 

「栞」主宰 松岡隆子


略歴

1942年 山口県生まれ
1978年 「銀座若葉会」入会、岡本眸に師事
1980年 「朝」創刊入会
1996年 朝賞受賞
2000年 「朝」編集長
2001年 第一句集『帰省』上梓
2008年 寒露賞受賞
2016年 第二句集『青木の実』上梓
  「朝」終刊につき編集長退任
2017年 「栞」創刊代表
2020年 4月「栞」主宰就任

俳人協会評議員

朝日カルチャーセンター横浜 講師

城西大学エクステンション 講師

 

句集 『帰省』『青木の実』